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出生:1990年2月14日(福島県) 学歴:千葉大学 教育学部スポーツ...

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プロフィール

出生:1990年2月14日(福島県)
学歴:千葉大学 教育学部スポーツ科学過程 卒業
筑波大学大学院 人間総合科学研究科 修了

【経験業種】
医療、スポーツ、ヘルスケア、地方公務

【経験ポジション】
ルート営業、新規開拓営業、代理店営業、商社営業、新規事業開拓、商品開発、マーケットリサーチ、一般事務

【ストレングスファインダー上位資質】
個別化/未来志向/責任感/着想/分析力/信念/学習欲/規律性/最上志向/成長促進

〈叱る依存〉がとまらない解説(第3章)【心理・社会領域】

著書「〈叱る依存〉がとまらない」を解説してきたこちらのシリーズも本投稿が3回目となります。これまでの内容を簡単に振り返ると、

第1章(←リンクから記事に飛べます)では、“叱る行為”の定義とその効果についてお話し、

第2章(←リンクから記事に飛べます)では、叱られる側の脳内メカニズムにフォーカスすることで、なぜ学びや成長の効果がないのか、紹介していきました。

 

第3章では、それら効果のない“叱る行為”を行ってしまうのか、また、繰り返してしまうのかについて、「叱る側」「叱られる側」双方の脳内メカニズムとその関係性にフォーカスして紹介していきたいと思います。

 

 

1.“叱る”と気持ち良くなる罠

叱る行為には、叱る側の脳内に対して「ある2つのご褒美(報酬)」を与えるそうです。

それは、

自己効力感

処罰感情の充足

です。

 

この報酬が得られる過程を簡単に図にしてみました。下記の説明と合わせて確認してみて下さい。

《自己効力感という「報酬」》

叱る行為は、多くの場合叱られた人の回避行動を引き出します。(そのメカニズムについては第2章を参照ください。)

叱られることに対する回避行動は、「ごめんなさい、もうしません!」と謝ったり、「わかりました、すぐやります!」と返事をしてすぐ行動することになります。これの反応は、叱る側の人からすると、「自分の行為には影響力がある」「自分が行動することで、良いことがもたらされる」といった感覚を得ることになり、これは人にとって心地よい心理状態と言えるようです。つまり、自己効力感を得られるということです。

 

《処罰感情の充足という「報酬」》

なんらかのルール違反を犯した相手に罰を与える体験をすると、脳の報酬系回路の主要部の一つである(背側線条体)が活性化することが報告されているようです。つまり、誰かを処罰することは気持ち良いという報酬に結びついているということになります。

そのような機能がなぜ人間に備わっているか。それは、誰かがずるをして富や食料を独り占めしたり安全な環境が脅かされることを防ぎ、コミュニティーの秩序を維持するためだからだそうす。悪いことをした人に罰を与えたくなるのはこのような心理が働くからですね。

 

上記のことからも分かるように、叱ることに効果があるように思われているのも、叱られる側の回避行動が即時的に得られるのが要因のようです。しかし、これには学びや成長の効果はない一時的な現象にすぎないので、著書では「幻の成功体験」と呼んでいます。

どうやらこれが、第1章の最後で述べた、「苦しまないと人は変わらない(学ばない、成長しない)」という世間の思い込み、につながっているようです。

 

 

2.エスカレートする“叱る行為”

上記の図の内容には、続きがある場合が多いようです。叱られる側の、同じミスを繰り返す行為です。叱る側としては、腹立たしい事態ですよね。何回も言ってるのに、またやった!と思いますよね。私自身にもそんな経験が少なからずあります。。

 

叱る行為に根本的な解決力はないので、同じことは繰り返されます。

そして、それが長期化する場合に考えられる現象としては、

叱られる側の「馴化」

叱る側の「刺激の強化」

が挙げられています。

 

こちらについても、以下の図と説明にてご確認ください

《叱られる側の馴化》

似たような刺激にさらされると人には慣れが生じます。これが「馴化」です。長時間繰り返し与えられる刺激に対して鈍感になり、当初見られていた反応が見られなくなる現象のことであり、これが、長期化する叱る行為の中で発生していると著書は指摘しています。

 

《叱る側の刺激の強化》

叱っても相手の反応が薄いと、自己効力感も処罰感情の充足も得られないため、より強い刺激を相手に与えることで、求める行動を引き出そうとする場合があるようです。これには、相手を罵倒したり、人格否定をしたり、辛辣な言葉を投げかけることで行われることもしばしば。

図で示したように、より強い刺激で相手の回避システムを動かせたとしても、それも馴化してしまう可能性はあるようで、それが叱られる人の人生に長期にわたる負の影響を与えてしまうこともあるとのことです。

 

 

3.「叱らずにはいられない」は依存症に似ているワケ

本章の最後では、著書のタイトルにも含まれる<依存>について触れていきたいと思います。

 

依存症と聞くと、薬物やギャンブル等が思い浮かぶかと思いますが、「脳科学辞典」では、依存症を次のように定義しているようです。

快情動を生じる物質の摂取や行為などを繰り返し行った結果、これを求める耐え難い欲求が生じ、これらを追い求め、これらがないと不快な症状を生じてしまう状態

 

そして、

なんらかの苦痛を抱えている場合に苦痛を和らげてくれるものに依存するようになるという、「自己治癒仮説」

を、依存症が生じてしまう条件として、著書では位置づけています。

 

つまり、受け入れがたい現実を抱えていることは、依存症のリスクを高めると言えるようです。それは、うまくいかない現実に対するイライラかもしれないし、低すぎる自己評価、他者への劣等感、多忙による慢性疲労や、極度の体調不良なのかもしれない、としています。

 

ここまで見てきた通り、叱る行為には叱る側の自己効力感を高め罰感情を充足し、脳に快情動をお覚えさせる効果があるため、依存症と同じような状態を作り出してしまう可能性があるとのことです。

 

イライラしたり、疲れていることなんて誰でもありますよね。でもそれって、誰にでも<叱る依存>の罠にはまってしまう可能性があるってことになると思うと怖いですよね。

ただし著書ではこれまでのメカニズムの説明だけでは終わっていません。叱ることとどう付き合っていけば良いのかについても言及していますので、次章ではその部分を紹介していきたいと思います。(多分次回が最終章です。)

 

最後まで読んでいただいてありがとうございます。

ご意見やコメントあればよろしくお願いします!